iPSCs-BBB研究所

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研究内容

血液脳関門という新たな診断、治療ターゲットの確立

〜脳のバリアシステムを診断・創薬ターゲットに〜

ヒトの神経細胞が正常に機能するためには、中枢神経内の恒常性を維持する必要があります。血液脳関門(blood-brain barrier: BBB)がこの役割を担っており、多くの中枢神経疾患ではBBBが破綻していることが知られています。これまではBBB機能を評価するサンプルが存在しないことが問題で、BBB破綻がどのように病態に関与するかが不明でした。

本研究室では、独⾃に開発した「患者iPS細胞からBBB構成細胞を作製する技術」を⽤いてこの問題を克服し、患者BBBに着⽬して神経疾患の病態解明を⾏うことで、BBBを標的とした⾰新的な診断技術と創薬に挑戦します。

これまでの研究成果のまとめ
中枢神経バリアシステムの破綻機序解明

今後の研究計画

幹細胞技術を用いて患者由来BBB構成細胞を分化誘導することでBBB破綻機序を解明するという独創的な研究を進めていきたいと考えています。目標は、BBB破綻のバイオマーカー開発、BBBを標的とした創薬を行い、臨床現場に届けることです。大きく分けて以下のテーマを研究しています。

1.BBB破綻が多発性硬化症患者の臨床像へ与える影響の解析
多発性硬化症は複数のサブタイプに分かれる個人差の多い疾患ですが、個人差の原因はわかっていません。我々は「遺伝的なBBBの脆弱性が症状の進行の規定因子である」というchallengingな仮説を立てて、研究を進めています。

2.脳小血管病でのBBB破綻機序解明
遺伝性脳小血管病を中心に、患者由来BBB構成細胞を作製することでBBB破綻機序の解明を行っています。近年、これまでは稀と考えられていた遺伝性脳小血管病の原因遺伝子がラクナ梗塞など弧発性脳小血管病のリスク遺伝子になり得ることが明らかにされています。症例数の少ない遺伝性脳小血管病の病態解明を足がかりに、より一般的なラクナ梗塞や脳血管性認知症などの解決にも挑みたいと考えています。

3.神経変性疾患でのBBB破綻機序解明末梢炎症と中枢神経変性の関連研究
アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病などに代表される神経変性疾患患者からBBBモデルを作製し、”各疾患に共通する”または”疾患特異的なBBB破綻機序”を解明する研究を行っています。さらには、近年注目が集まっている末梢の炎症が中枢神経の変性にどのように関与しているのかの病態機序を解明する研究を行っています。

4.より良いBBBモデル構築
現時点では、vivoの全ての機能を反映した完璧なin vitro BBBモデルは存在しません。自身の研究目的に応じてその機能が評価できる最適なモデルを選ぶことが重要になります。内皮細胞の形態とトランスクリプトーム発現、免疫細胞の相互作用に優位性を持つ独自のモデルをさらに改良する研究を行っています。具体的には3D-BBBモデルの作製や、中枢神経構成細胞の共培養モデルの作製、内皮細胞自体を小分子の投与によってよりBBB特性を持たせる方法の開発を行っています。